研究分担者 |
馬場 悠男 国立科学博物館, 人類, 主任研究官 (90049221)
久保 武 大阪大学, 医学部, 助教授 (30107031)
山崎 信寿 慶応大学, 理工学部, 助教授 (70101996)
石田 英実 京都大学, 理学部, 教授 (60027480)
遠藤 萬里 東京大学, 理学部, 教授 (20011504)
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研究概要 |
2足歩行能の起源と進化の考察は、従来よりさまざまな仮説が展開され、研究成果は多様に放散してまだまだ模索の段階にあると言ってよい。当該年度において研究分担者のあげた成果,またはあげつつある成果を、当初の研究実施計画をふまえながら簡単に記す。 まず人類の直立2足姿勢および歩行そのものの実体を、運動学的に詳細に解析されねばならない。遠藤はこの点について、足底合力の着力点の安定度を指標にすることを着目し、光弾性法、圧力センサ-法、触圧センサ-法を用いて測定検討中である。このように足底合力の諸特性を体系的に分析した研究はまだ見当らない。また久保,太田らはこの点を頭、顔部の安定度を指標として検討に入っている。この成果はヒトの平衡神経失調時の診断法としての応用の可能性も含んでいる。歩行運動と筋骨格系の消費エネルギ-の関連について、いくつかのシミュレ-ションモデルを設定して実験を行った(山崎)結果,自在に歩く時の歩調,歩幅で筋エネルギ-が最小になること,つまりゆっくりとした自然の2足歩行を可能にするため、ヒトでは最適の筋骨格系の効率化がなされていることをつきとめつつある。これらの正果の基盤になる筋骨格系の膨大な種間比較(ヒト,類人猿など50種の霊長類,一般四足獣53種)の考察(木村),類人猿とヒトにおける下腿三頭筋の比較(熊倉)など、形態適応の研究も着々と成果をあげている。最近、2足歩行の前適応の運動様式として注目されているサル類の木のぼり運動の運動学的解析(俣野、太田)や、多様なこれらの霊長類運動様式を反映する,運動系にかかわる脳構造の進化パタ-ンの考察(俣野)などの研究も順調に進展している。最後に化石資料の調査に関しては、石田がケニアピテクスの四肢骨について、馬場がアウストラロピテクスの骨盤形態を検討しながら,2足歩行の起源に考察を加えつつある。
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