研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き和牛去勢牛20頭とホルスタイン種去勢牛30頭の共進会出品牛を用いてビタミンA栄養状態と枝肉形質の関係について検討をした。肝臓中ビタミンA濃度の平均値と標準誤差は平成2年度では4.6±2.4μg/g,平成3年度では9.6±5.4μg/gであり,昨年度と大差なく,明らかなビタミンA欠乏と判断される肝臓中ビタミンA含量が1μg/g以下の牛は平成2年度が20頭中9頭であったが,平成3年度は11頭に漸増していた。一方,ホルスタイン種去勢牛は,ビタミンA欠乏であると判断される1μg/g以下の牛は存在しなかったが,平成2年度の値である89.2±12.0μg/100mlと比べると平成3年度では44.6±5.6μg/100mlとなり肝臓中ビタミンA含量は半分になっていた。これは肥育農家の人がホルスタイン種牛でもビタミンA欠乏飼料を与え始めていることを示している。肝臓および血漿中ビタミンA含量と枝肉形質との一次相関をみると,ホルスタイン種牛ではどの項目にも有意な相関は見られなかったが,40頭の和牛では肝臓中のビタミンA含量とBMSで示される脂肪交雑の間に1%水準で有意な負の相関,光沢・きめ・しまりなどを肉質との間にも1%水準以下で有意な負の相関を示していた。牛がビタミンA欠乏になると様々な障害がでることは明白な事実であるので、本試験結果を安易に公表すべきでないと思われると同時に,ビタミンA欠乏が何故に肉質にこのような影響を与えるかについては今後検討しなければならない課題であると考えられる。血漿中Mg濃度が1.1mg/100mlまで低下させたマグネシウム欠乏めん羊と0.4mg/100mlまで低下させたマグネシウム欠乏ラットを用いて,血漿中各脂肪分画濃度の変化を調べているところであるが,ラットの試験ではトリグリセライド濃度,めん羊の試験では遊離脂肪酸濃度に明かな変化は見られていない。
|