研究概要 |
気管支喘息に起因する死亡は厚生省の統計では過去15年間,10万人に5人程度であるとされる。しかし,諸外国では喘息死の増加が注目されている。今回は本邦の最近の成人の喘息死の実態をより明きらかにする目的で全国規模のアンケ-ト調査を実施した。全国200床以上の病院および呼吸器科を有する病院を対象として1986年〜1989年間に死亡した症例につき回答を求め,その結果を集計,解析し,1961〜1985年迄の光井らの報告と比較検討した。1.総死亡者数449名,男242名,女158名,不明1名で,年令は16才以上である。この中,喘息発作が直接死因となった発作死は351名(男192名,女158名)であった。直接死因が不明,又は喘息以外の原因の死亡が約22%であった。2.発作死351名の中,窒息死は329名(93%)であり,その中,発作開始から24時間以内に死亡したものは243名(69%)にみられた。これは1985年以前のそれと比較して,微かに増加傾向であった。3.発作死の年令は50,60,70才代の順に多く1985年以前に比し,若年化の兆しがみられた。4.発作開始から1時間以内に死亡してしまういわゆる“急死"は全体の約25%であり,過去10年間での特徴であった。5.喘息死と生前の重症度との関連では,1980年以前には喘息死亡の80%を占めていた重症者の死亡が今回の調査では50%に減少し代って軽症,中等症の死亡の増加が観察された。6.病型別には慢性型(約70%),発作型(30%),アトピ-型,感染型,混合型が各々15%,35%,50%で,これらは1985年以前と比し大きな変動はみられなかった。7.医師があげた死亡と関連する事項としては患者の疫病への認識不足,種々の原因による治療の遅れや不充分などが主であり,患者教育や救急体制の整備,充実の重要性が考えられた。今後,これらの充実とともに喘息死に関する調査を継続して実施する必要性が考えられた。
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