細胞間相互作用における膜リン脂質の役割

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02304054
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 中澤 泰男 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 名誉教授 (50013793)
• 研究分担者: 濱田 昭 昭和大学, 薬学部, 教授 (50053781) ; 藤井 達三 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90065904) ; 齋藤 國彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (80077560) ; 岡本 光弘 大阪大学, 医学部, 教授 (90028613) ; 井上 圭三 東京大学, 薬学部, 教授 (30072937)
• キーワード: スフィンゴ脂質 / PIアンカ-たんぱく質 / ホスホリパ-ゼC / 生体内ラジカル / ホスホリパ-ゼA_2 / リンホトキシン / 血小板活性化因子 / コリンホスホトランスフェラ-ゼ

研究概要

ホスホリパ-ゼA_2をラット小腸より精製して、その性質を検討し(岡本)、A_2腫瘍壊死因子によ(TNF)による活性化機構を明らかにした(井上)。またリンホトキシンの細胞傷害発現に伴うA_2活性の上昇機構を明らかにし(豊島)、血小板のコラ-ゲンによる活性化にはコラ-ゲンレセプタ-関与のA_2の活性化が関与していることを示唆した(鬼頭)。またホスホリパ-ゼCについては、ラット肝の核において、肝癌および再生肝にのみ存在する分子種を見出し(小泉)、ヒト血小板より単離したアイソザイムのPIP_2分解活性に対するゲルゾリンの作用を検討した(野沢)。
血小板活性化因子(PAF)については、ラット子宮におけるPAF量対するエストラジオ-ルの影響を検討し(齋藤)、PAF特異抗体を作製し、ラジオイムノアッセイによる定量法を開発し、さらにPAFの酵素的不活性化機構を解析し(野島)、PAFアセチルヒドロラ-ゼ欠損血清よりPAF遊離因子を精製した(鈴木)。また、PAF前駆体であるアルキル型コリンリン脂質の無脊椎動物における分析を行った。
またスフィンゴ脂質のCHO細胞増殖における役割を明らかにし(赤松)、マウスB細胞において新たなホスファチジルイノシト-ル(PI)アンカ-たんぱく質の存在を確認し(池沢)、PIの情報伝達系における機能について検討した(竹縄)。さらにジアシルグリセロ-ルリパ-ゼの活性発現機構の検討(中澤)、コリンホスホトランスフェラ-ゼ分子種のフォトアフィニティ-ラベルによる解析(石館)を行った。
以上の研究に加えて、脂質過酸化における細胞膜の構造変化(藤井)、リン脂質の生体内ラジカルの消長に及ぼす影響の検討(濱田)、合成フッ化脂肪酸を用いたリン脂質の物理化学的性質の検討(村松)、など細胞内リン脂質の機能に関し多角的研究を行った。

研究成果

• [文献書誌] K.Ishidate,R.Matsuo and Y.Nakazawa: "CDPーcholine;1,2ーdiacylglycerol cholinephosphotransferase from rat liver microsomes.II.Photoaffinity labeling by radioactive CDPーcholine analogs" Biochim.Biophys.Acta. (1992)
• [文献書誌] K.Takayama,S.Hara,I.Kudo and K.Inoue: "Detection of 14ーkDa group II phospholipase A_2 in human seminal plasma" Biochem.Biophys.Res.Commun.178. 1505-1511 (1991)
• [文献書誌] M.Inada,H.Tojo,S.Kawata,S.Tarui and M.Okamoto: "Preferential disribution of groupーIIーlike phospholipase A_2 in mononuclear phagocytic cells in rat spleen and liver" Eur.J.Biochem.197. 323-329 (1991)
• [文献書誌] R.Nakayama,K.Yasuda,T.Okumura and K.Saito: "Effect of 17ーestradiol on PAF and prostaglandin levels in oophorectomized rat uterus" Biochim.Biophys.Acta. 1085. 235-240 (1991)
• [文献書誌] T.Hashizume,H.Yamaguchi,A.Kawamoto,A.Tamura,T.Sato,T.Fujii: "Lipid peroxide makes rabbit platelet hyperaggregable to agonists through phospholipase A_2 activation" Arch.Biochem.Biophys.29. 47-52 (1991)
• [文献書誌] K.Takeshita,H.Utsumi and A.Hamada: "ESR measurement of radical clearance in lung of whole mouse" Biochem.Biophys.Res.Commun.177. 874-880 (1991)
• [文献書誌] K.Ishidate and Y.Nakazawa: "Choline/ethanolamine kinase from rat kidney Method.Enzymol.,209,121ー134" E.A.Dennis and D.E.Vance, 752 (1991)
• [文献書誌] K.Saito,R.Nakayama,K.Yasuda,K.Satouchi and J.Sugatani: "PAF analogues in normal rat tissues Biological Mass Spectrometry,527ー547" A.L.Burlingame and J.A.McClosky, 821 (1991)