研究課題
常温核融合現象の再現性は依然として乏しい。この萌芽的研究分野において、科学研究費補助金(総合A)による本研究計画からの成果は国際的にも高い評価を得ている。中性子計測に関しては、複数の互いに独立な計測器を用いて中性子検出が確認された(核融合研究所 池上、東工大 岡本)。さらに常温核融合における中性子のエネルギ-・スペクトラムの測定にも成功し、中性子のエネルギ-が2.45MeVであることを確認した(阪大 高橋、北大 水野)。核反応生成物としてのトリチウムの検出は、中性子の発生量をはるかに上回る事例が観測されている(北大 水野)。常温核融合からの過剰熱に関しては、電解法において入力の数10%を上回る熱出力を検出した(東京農工大 小山、横浜国立大 太田)。しかしながら、この程度の過剰熱は「核融合」に関連させることなく説明が可能かもしれない。過剰熱と中性子またはトリチウムとの相互関係は不明である。機構解明のため唯一の可能性と考えられる「ひびわれ核融合」を追及する実験も行われた(中央大 深井、東北大 新村)。結果は否定的であったが、実験手法が材料的制約を受けるため、「ひびわれ核融合」の可能性を完全に否定するまでには至っていない。次年度に残された基本的研究課題は、中性子発生の制御性の確立、更にこれら中性子発生源がパラジウムやチタンなど、常温核融合実験セルからであることの絶対的確認である。研究発表会は平成2年10月、東京都立大学との共催により同大学において200名の出席者をえて開催された。研究内容は「常温核融合ミニシンポジウム要旨集」として出版されている。
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