研究分担者 |
佐々木 脩 秋田県立農業短期大学, 助教授 (80073972)
岡田 幸助 岩手大学, 農学部, 助教授 (50002077)
首藤 文栄 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (60001533)
落合 謙爾 北海道大学, 獣医学部, 助手 (80214162)
前出 吉光 北海道大学, 獣医学部, 教授 (40002084)
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研究概要 |
1.水鳥の鉛中毒の発生調査とその病態 北海道宮島沼に飛来したオオハクチョウ,コハクチョウ,マガンが,1990年4月〜5月にかけて約80羽死亡した。これらについて血液学的並びに病理学的に検索した。その結果,鳥種を問わず基本的には共通の病変を示した。すなわち,赤芽球増生を伴った骨髓低形成と黄疸が基幹変化であった。これら一連の変化は散弾鉛毒が先ず赤血球を破壊し,この結果ビリルビンが過剰に形成されて黄疸が生ずる,いわゆる前肝臓性黄疸の機序によると解された。なお,骨髓の低形成は鉛毒の直接的作用に起因するとみなされた。 死亡した水鳥の全ての筋胃内には,1個体当たり数個から60個の散弾鉛が認められた。これらの鉛は,その溶解状態並びに死亡例の病変の新鮮さから,宮島沼で攝取されたとみなされた。この事実は,宮島沼には極めて多数の散弾鉛が蓄積していることを示唆する。 2.鶏を用いての鉛中毒の実験的作出 幼若動物に鉛を与えると急性鉛脳症が起こることは古くから知られている。我々は鶏雛を用い,これに散弾鉛と低Ca飼料を与えることにより,急性鉛脳症を確実に作出し得た。すなわち,鉛散弾10個とCaを0.1%含む飼料を給与すると雛は100%死亡して鉛脳症を示すのに対し,鉛散弾5個とCaを1.0%含む飼料を給与すると死亡率は著しく低下した。 鉛脳症の病変は与えた鉛散弾数と飼料中のCa含量によって程度差があったが,脳浮腫,小脳出血を肉眼的には示した。組織学的には,脳浮腫と星状膠細胞のび漫性増殖のほか,毛細血管周囲に好酸性硝子様顆粒が認められた。 以上の実験から,鉛中毒の発生には飼料成分の影響が考えられ,水鳥の本症発生には食性の影響も考慮する必要があるとみなされた。
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