研究課題/領域番号 |
02354003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高谷 好一 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (90027582)
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研究分担者 |
田中 耕司 京都大学東南アジア研究センター, 助教授 (10026619)
山田 勇 京都大学東南アジア研究センター, 助教授 (80093334)
古川 久雄 京都大学東南アジア研究センター, 教授 (00026410)
土屋 健治 京都大学東南アジア研究センター, 教授 (60009701)
前田 成文 京都大学東南アジア研究センター, 教授 (50027588)
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キーワード | 熱帯多雨林 / 東南アジア / 人の森林の調和 / 環境破壊 / 環境保全 / 自然観 / 人間活動 / 生態系 |
研究概要 |
本総合研究では、日本人として少なからぬ関係をもつ近年の熱帯林問題に対して、欧米の研究者とは異なる視点で問題を捉え、解決に至る研究のありかたを探ることを目的とした。 3回の全体会議を、京都(7月7・8日)、松山(1月6〜8日)、穴水(2月16〜18日)で開催した。会議では、各研究分担者が、それぞれのフィ-ルド調査結果に基づき、(1)熱帯多雨林の生態的特徴(2)熱帯多雨林世界の伝統的生業、生活様式(3)世界経済システムの中で熱帯林利用と破壊・再生の現況(4)森にすむ人の自然観・倫理観、に関して話題を提供し全員で討議を重ねた。 提出・討議された議題は、「多雨林の現況」「森の『文明』について」「東北タイでの育林考」「農民開拓と森林」「文明史からみた森林」「ニュ-ギニア低地民にとっての森林」「サラワクの森林の商業伐採の諸問題」「熱帯林の生物群集」「アフリカ熱帯林における自然と人の共存」「熱帯降雨林と照葉樹林」「海の中の森の行方」「東南アジアの熱帯林研究は社会生態系モデルによって」「北と南、未開と文明についての断片的な考え」などである。 一連の討論の結果、熱帯多雨林は、(1)多様な生物群集が予測不可能な環境の中で共存している生態系として特徴づけられること(2)一方、人にとっては、見通しの悪い、瘴癘の地であり、カミガミの住む不可侵世界として固有の倫理関係を結びつつ共存をはかってきたこと(3)近年の熱帯林破壊は、森とは異質な空間に起源した西欧合理主義による、森と人間の倫理関係を無視した森林利用に起因していること、などを明らかにした。そして熱帯林保全の問題は、自然保護区設定などの一種の"囲い込み"によってでなく、この人と森林の倫理関系を基底とした、永続かつ調和的な利用形態を模索することによってのみ解決できると結論した。
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