研究課題
総括班会議および公募審査会開催;平成3年度より重点領域研究「単一遺伝病の分子・細胞生物的研究」発足するにあたって、研究が円滑に遂行するよう準備調査をおこなった。本研究は最近の研究手法を駆使して遺伝病という難病の予防・治療法の開発を目指すと同時に、これらの疾患の分子レベルの究明を通じて、ヒトにおける遺伝子発現及び調節機構の未知の部分の解明するのが目的であり、I.病因遺伝子の単離と解析II.疾患発症の分子機構の解明を主要研究項目としている。各研究項目について、その目的が達成されるためには慎重な研究計画の立案とともに、十分な情報交換システムと協同研究体制の確立が必要である。そのために総括班会議を行った。また本研究組織は計画研究班に若干の公募研究を加える予定である。そのための公募要領(重点領域研究研究計画概要)を作成するとともに、審査委員会を開催した。予備的研究;非ケ-シス型高グリシン血症の分子遺伝学的解析(1)Pー蛋白欠損型非ケト-シス型高グリシン血症患者の遺伝子解析を行った。剖検肝より調整したPー蛋白mRNAをcDNA化し、構造解析を行った結果、蛋白翻訳領域に3塩基が欠失し、756番目のフェニルアラニン残基が1つ欠落したPー蛋白をコ-ドしていた。3塩基欠失アリ-ルはCos7細胞に導しての発現実験でPー蛋白活性が発現しなかったことから、病因変異と考えられる。(2)従来、グリシン開裂酵素の発現は肝、腎、脳に限られ、線維芽細胞や白血球には発現しないとされていた。今回我々はEBウイルスでトランスホ-ムしたBリンパ芽球にグリシン開裂酵素の活性が存在することを見いだし、患者の酵素学的診断や保因者診断に有用であることを明らかにした。更に、これは患者の末梢血でのP蛋白mRNAの構造解析を可能にしたことを示唆するものである。