出雲のシャマニズムと沖縄のシャマニズムの対比に際して最も顕著な特徴は、出雲が男子による祭りであるのに対して沖縄の祭りは女子による祭りであることである。 出雲の場合は、桜江町や美保の祭りが男子による祭りであり、その構成員は村内長男子を中心とする祭りであり、客定めや神楽における長男子主役の姿などに、その男子を中心とする姿が観察される。一方、沖縄の場合には、久高島、国頭地域、先島地域などの祭りがノロ、若ノロ、根神、あるいは掟神などを初めとする女性のみの集団を中心として行われる姿のうちにその特徴が観察される。おなり神信仰も極めて母系的現象である。 美保神社の祭りもその当屋は神がかっており、神楽の中心は神がかっての託宣にある。さらに、神であることの徴としての三つの紅の化粧も存する。沖縄の久高島の祭りの場合も三つの紅の化粧は存し、かってはノロは神がかったという。 しかし、イザイホ-、ウンジャミ、あるいは先島の祭りなど沖縄の女子による祭りが常に激しい情緒的興奮を伴い、動的動きを含むものであることは沖縄的特徴の一つと言いうるだろう。 一般に、沖縄社会は中国的・父系的社会であると言われるが、その下層では母系的なものをミクロネシアなどと分有している。沖縄地域は母系的因子に関して八丈島などの伊豆・小笠原地域とも強い類似が観察される。 この沖縄地域のノロ・根神・ツカサを中心とする動きについて本年度は特に中心的問題として観察してきた。このような局面を来年度もさらに明確化していこうとする。沖縄の母系の先在を示すことは学問的に非常の意味のあることであり、日本文化の解明にとっても大きな意味を持つと考えている。
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