研究概要 |
今年度は、初年度にあたるので、最初の段階では調査票の作製に向けて内外の社会階層および社会意識に関する文献の整理と理論的研究を行なった。本研究とも関係の深いSSM調査の調査票に関しては、分析も含めて子細に検討した。この結果いくつかの分析において理論的方法論的に誤りがあることを見出した。この研究成果のうち、階層認知および階層帰属意識について,1991年度数理社会学会大会で発表を予定している。特にファラロの階層認知モデルを展開して階層認知の逆転現象について数理社会学的分析を行ない、ファラロモデルを一般化したモデルを示した。また,これまで実証分析ばかりで理論的根拠が明らかにされることのなかった中意識についての肥大化に関する高坂モデルの検討を行ない,それが実は誤ったものであることを明らかにした。 また、本研究の柱である実証調査デ-タの分析の準備段階として、デ-タ解析の方法の準備として,計量社会学理論およびモデルの検討を行ない、その成果の一部は、近く刊行予定の『社会調査の設計と解析』の中に所集の予定である。また、実査の段階での非抽出誤差の混入の防止のために従来の調査でのバイアスの発生メカニズムに検討を加えた。この結果メ-キング等の発生,回顧的デ-タの問題について明らかにした。 また、本年度の後半では、調査目的と予算額に対応して調査地区の決定を行なった。東京、名古屋、大阪の3大都市圏で社会階層と社会意識の変動に関して調査を行なうことに決定した。これは、この地域が日本の先進的地域であり、来るべき日本の変動も多くはこの地域から生じると考えたこと、さらに、人口的にもこの地区に集中していることを主な理由とした。また、周辺地域をも含めることによって社会階層と大都市で働く人々とがどのような関連をもつのかを明らかにすることをも目的とするからである。現時点では、デ-タ整理等の段階である。
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