研究課題
本研究は、日本における大学自己評価の進展にどのような課題があるかを、理論的・実証的な立場から明かにしようとしたものである。理論的な研究として、アメリカおよびヨーロッパ諸国における大学評価の諸研究を検討・分析して、特に大学自己評価をめぐる分析の基礎となる枠組みを形成する試みをおこなった。教育、研究といった、高等教育機関の機能分野に対応する構造に着目するのと同時に、評価の目的、方法、内容といった面で、一方において効率性の向上、他方において研究・教育の自律性の尊重、という相反する要請の双方をいかにくみあわせているか、が重要な視点となる。同時に、わが国において実際に自己点検・評価がいかに進行しつつあるかを、全国の大学、学部に対するアンケート調査で明かにしようとした。第1回の調査は、1991年に行われ、いわば自己評価・点検の出発点にある日本の大学の現状をとらえた。第2回調査は、1993年初頭におこなわれ、その後の進展を分析した。これによれば、多くの大学は、自己評価のための組織を設置するという一次的な段階に達しているものの、実際の評価を実施し、さらにその質を向上させて、長期的な計画に結びつける段階には至っていないことが明かとなった。これらの分析作業をつうじて、大学自己評価は、日本でも重要な役割をおう可能性はあるものの、現実の自己評価の実施、その質的な向上には障害が大きく、そこに課題があることが結論された。
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