研究課題
研究初年度である今年度は、主に海外の研究状況の調査と、研究文献の入手に費やされた。欧米での女性史研究の進展ぶりには、目を見張るものがある。これは、歴史研究の対象が、旧来の人物、政治史、国家機構、「社会構造」といった領域から、日常生活、「心性」といった方面に重点を移しつつあることと大いに関係する。もちろん、女性の地位向上、社会での進出ぶりも影響していよう。したがって、これら欧米の女性史研究は、「偉人伝」的なものよりもそれぞれの時代、地域の社会、家族の中での女性の地位、役割、さらに女性観といったものを扱っている。たとえば、フランス語でオリジナルが出され、現在独語、英語訳が進行中の「私生活の歴史」(L'histoire de la vie prive^^´e)のシリ-ズの中には、本研究のテ-マへの貴重な示唆が多く含まれている。今年度前半は、こうした文献情報を研究雑誌、書評誌、出版社や書店の新刊情報等で集め、次いで書店等への発注、大学図書館を経由しての外国図書館への貸し出しないし複写依頼を行なった。ソ連、東欧の混乱は文献入手にも影響を及ぼした。例えば東ドイツでは、従来の出版計画が破綻を来たし、また在庫の売却により、多くの図書が絶版となった。このようにして、一部手に入らなかった文献もあるが、大方の資料は入手出来た。また、「設備・備品」として購入した図書が420冊と申請書に記載した550冊を下回っているが、これは安価な図書を「消耗品」として購入したためである。なお、本科学研究費で本年度購入した文献を使用した成果が公表されるのは、各研究分担者が平成3年度に発表する研究論文、図書、ならびに来年度末に作成する研究報告書においてである。今年度の研究成果としては直接に女性史と関連しないものが多く、ー女性史検討の前段階及び背景としての社会状況の把握としては、どれも不可欠のものであるがー本報告書からは除外した。