本研究の目的は、設計と施工の間で交換すべきエンジニアリング情報の内容を明確にすること、またそれらの情報の交換と統合のための道具と方法論を開発することにある。研究の最終目標であるエンジニアリング情報統合化システムの開発に関しては光ディスクなど情報機器を利用した統合化システムの基本構成部分の検討中であり報告すべき段階に至っていない。ここでは設計と施工の間で交換すべきエンジニアリング情報の内容を明確にするために行った建築士事務所調査(ライフサイクルを考えた設計と施工計画に関連する設計業務の調査)での知見を以下にあげる。 1.設計者の約8割は施主からの提示がなくとも使用年数を想定して設計している。 2.さらに3割強の事務所は、施主とLCCについて話し合いをよくもっている。 3.にもかかわらず、プロジェクトごとに計画修繕表を作成している建築士事務所は約1割と少ない。必要な情報が入手できないことが主因であった。 4.施主からコストバランスについての要望はあるが、十分には対応できない所が6割強にのぼる。情報と方法論の欠如はあきらかである。 5.以上から少なくともLCCを簡便に算定でき、コストバランスが操作でき、それをふまえた計画修繕表が簡単に作成できるシステムが必要である。 6.設計着手前に工事の完成時期が決定している場合が多い。設計完成時期や工事の着工時期はそれよりも重要度は低いとみなされている。 7.その決定の根拠は論理性に欠け、ここでも必要な情報の入手性が問題であった。 8.従って、施主から工期短縮の要請がでたとしても設計者側で対応することが困難で、「できるだけ早く施工者をきめ、協議する」との回答が返ってくる。 9.概略の工期算定とそのための技術情報の支援システムが求められている。
|