研究概要 |
1.強磁性体YIG(イットリウム・鉄・ガ-ネット)の球状単結晶試料において,マイクロ波による平行励起法により,特定の波数を持ったマグノン対のみを熟平衡を大きく超えて増加させた。マグノン数の不安定増大,マグノン数振動,カオスなどが発生するマイクロ波電力の閾値を,外部静磁場の関数として測定し,初期の目的通り,マグノン非平衡系の状態図を作成した。安定した発振から周期倍分岐ーカオスと明確な状態変化が観測されたのはマグノン波数が小さい場合であり,4マグノン相互作用ハミルトニアンによるシミュレ-ション結果に良く一致している。波数の大きい領域では準周期発振,間欠カオスおよび高次元カオスの可能性があるノイズ状発振が観測された。これらの解明は次年度以降の課題である。 2.上記実験において励起マイクロ波に振幅変調を加えると,周波数モ-ド・ロッキング状態や準周期カオスが観測され,解析の結果,ト-ラス状のアトラクタ-が確認された。またカオスを定量的に記述する量として,正のリヤプノフ指数が求まった。 3.これらの測定はマイクロ波空洞共振器を利用して実施されるが,マグノン系とこれら外部測定系との相互作用も考慮する必要がある。そのため,Q値で表される空洞共振器の減衰定数がマグノン・カオスの観測値に与える影響を調査した。空洞共振器内に細いカ-ボンロッドを連続的に挿入する装置を製作し,マグノン不安定化と発振発生の閾値のQ値依存性を測定し,モデルハミルトニアンによる理論結果と比較した。この結果外部測定系の影響を排除した本質的なマグノン緩和を見積もることが出来た。
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