大気中のメタン濃度に経年的な増加傾向が見られることから、温室効果や対流圏・成層圏オゾンに対する影響が問題とされている。しかしながら、メタン濃度の増加の原因が大気供給源強度の増大にあるのか、大気中の消失反応の衰退によるものか、必ずしも確定してはいない。さらにメタンの大気供給源としても、湿地・沼沢地・田圃・家畜腸内発酵・バイオマス燃焼・埋立地・廃棄物・石油石炭採掘などがあり、これらの発生源の強さとその変動は十分に解明されてはいない。発生源強度は人間活動と自然の生態系の様態によって地域的にも大いに異っていると考えられる。この研究においては、新規に開発した大気メタン連続測定器を航空機に搭載して、対流圏メタン濃度の水平・鉛直方向分布の変動性を広域的に測定する。これによって得られたデ-タを解析して、発生源強度分布を推定し、メタン濃度増加の原因究明に資する。 平成2年度においては、まず、試作ずみのメタン連続測定器を改良して、航空機搭載用モデルを製作した。搭載用モデルの設計・部品の購入・組立を終了し、実験室内における性能試験を行った。試験の結果、試作したプロトモデルに比べ、測定ノイズが予想以上に大きく、安定動作のために種々の工夫を付加する必要が生じた。野外テストとして、船上での動作試験を行い、数分から10分程度の測定時間をかければ、船の振動によるノイズを押さえて、1%程度の測定精度を達成できることが判明した。航空機搭載用としては、10秒以下の測定時間で1%程度の測定精度を出すことが必要であり、引続き改良を続ける予定である。
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