研究課題/領域番号 |
02402020
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
南日 康夫 筑波大学, 物質工学系, 教授 (10133026)
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研究分担者 |
大井川 治宏 筑波大学, 物質工学系, 助手 (60223715)
川辺 光央 筑波大学, 物質工学系, 教授 (80029446)
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キーワード | GaAs / IIIーV族化合物半導体 / 表面処理 / 硫化物処理 / 表面構造 / 表面欠陥 / 界面欠陥 |
研究概要 |
GaAsを中心とするIIIーV族化合物半導体における、硫黄処理による表面安定化の機構を解明する為に、硫黄の結合状態や表面フェルミ準位の位置、並びに表面原子位置の正確な同定を、条件(結晶面、処理温度、熱経歴、露光、被覆膜等)を変化させて、詳細に検討した。その結果、硫黄処理の効果は、GaAs(100)、(111)A、(111)B等の各面で質的に共通であることを光電子分光法により確認した。すなわち、室温ではSーS、AsーS、GaーS結合が存在するが、約190℃でGaーS結合が支配的になり、約350℃でGaーSのみになる。特に重要なのは、このときの表面フェルミ準位の位置が約0.3eV低エネルギ-側にシフトする現象であり、これは表面安定化に伴いバンドの曲がりが平坦化した為と考えられる。さらに、X線定在波法により、安定化表面での硫黄原子の位置を測定・評価したところ、GaAs表面のAsが硫黄と置き換わっていることが明らかとなった。これは、(111)A、(100)、(111)B表面における硫黄とGaとの結合手の数がそれぞれ1本、2本、3本であること、換言すると、GaーSの結合エネルギ-がこの順に大きくなっていることを意味する。実際、硫黄の熱脱離温度は、(111)Aでは586℃、(100)では596℃、(111)Bでは618℃と順に高くなっており、表面構造の違いから予想される結果と合致する。 また、絶縁膜を堆積する前と後での、発光分光特性や界面構造の違いを検討し、(111)B面やGaーS結合で保護された加熱処理表面を利用すると、損傷の少ない良好な界面が得られることを明らかにした。 さらに、陽電子消滅法をGaAs以上のGapにも適用し、損傷に伴って発生する欠陥の同定を行っており、表面安定化の機構だけでなく、欠陥制成の要因を含めた、硫黄処理効果の解明を総合的に進めている。
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