昨年までの単独翼の実験により、遷音速流域で風洞壁境界層や翼挿入によるブロッケージの影響が強く現れているため、流路特性を改善する必要が生じた。本年度は、風洞上下壁のうち上壁を可変形状壁に製作し直し、さらに下壁および側壁面には境界層吸入部を設けた。要求マッハ数に応じて流路面変化の最適化と境界層制御によって流れ場の改善を図り、翼列実験を行った。本研究の対象である翼列圧力比の高い場合に生じる不始動状態を実現するため、下流ディフューザ内に絞り弁を設置し、翼列圧力比を変化させた。実験は設定マッハ数1.4における風洞内流れ場を壁面静圧及び光学計測により観察し、可変形状壁所境界層吸込みによる効果を調査した。その結果、壁形状を最適化することにより風洞マッハ数を設定値へ±0.02の誤差で近づけることが可能であること、境界層制御により翼スパン方向への非一様性が改善されることが明らかになった。また、絞り弁の調整により任意の翼列圧力比の流れ場を得ることができ、圧力比が2.0程度以上では、翼列前縁に離脱衝撃波を生じ、不始動状態の実現が確認された。それにともない、圧力比の小さな始動流れから、大きな不始動流れへ遷移する過程での衝撃波形状の変化、及び、圧力分布の変化が得られ、現象の基本となる遷音速翼列の定常流れ場の特性が明らかとなった。 数値解析法では、2次元振動翼列に対して移動格子網を用い、オイラー方程式をTVDスキームで解く手法を確立した。一翼振動による影響係数法に基づいており、翼列6ピッチ分の非定常流れ場を解析して周期的成分を抽出した。衝撃波が翼面に当たる近傍で変動空気力が大きくなり、翼間位相差によってフラッタが起こり得ることが示された。
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