研究概要 |
本研究の目的は、液体中で生じる物質の化学反応に及ぼす乱流混合の効果を実験及び数値シミュレ-ションによって解明することである。本年度遂行された研究内容及び現在の進行状況は以下の通りである。 (1)まず,第一の目標は最も単純な化学反応過程であるA+B→C型の反応を示す化学物質の選択であった。現在のところ,lーナフト-ルとジアゾスルファニ-ル酸のアゾ結合反応あるいは直接染料(Congo Red)の酸性液中での呈色反応(青色に変色)が有力候補であるが,未だ決定するに至っていない。今後も調査を継続する予定である。 (2)実験については,既存の水路を利用して,まず反応のない場合の2成分同軸噴流の混合過程をレ-ザ-流速計と分光濃度計により調べた。用いた物質は直接染料のダイレクトファストオレンジ(物質A,中心噴流)とレオナルブル-(物質B,環状噴流)である。極めて信頼性の高い効果がいくつか得られたが,特に中心軸上における2成分濃度相関係数C_<AB>=<γ_Aγ_B>^^^ー/{√<γ^2_A^^ー>・√<γ^2_B^^ー>}の下流方向変化(-1から1への単調増加)は,今後の化学反応過程の調査に貴重な資料を提供するものである。実験については,上記の2成分噴流の他に,現在液中化学反応用管路の設計,製作が進行中である。測定系については光ファイバ型多成分濃度計と光ファイバ型2次元レ-ザ-流速計が本年度購入され,現在テスト中である。 (3)シミュレ-ションに関しては,第一段階として,格子乱流中の連続点源拡散についての変動濃度場の計算と,発達した管内流における物質のパフ拡散,連続点源拡散の計算が確率過程モデルによって行われ,過去のデ-タとよい一致が得られた。今後A+B→O型やA+B→C型の反応過程への応用を考えている。また,ランダムフ-リエモ-ド法による物体まわりの流体粒子の挙動の計算や速度・散逸pdfモデルによる一様等方性乱流中の均一勾配スカラ-場の発達の計算も現在進行中である。
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