研究概要 |
本研究の目的は、単一素子で脳神経細胞のニュ-ロンと等価な働きをする全く新しい概念のMOS型デバイス,ニュ-ロンMOSFET(以下VMOSの略す)を研究開発することである。VMOSは、フロ-ティングゲ-トを有し、これと容量結合する多数の制御ゲ-トが信号入力端子となるMOSトランジスタで、入力信号電圧の線形加算をフロ-ティングゲ-トのレベルで実行できるという大きな特徴を持っている。フロ-ティングゲ-トの電位がMOSトランジスタの閾値を越えるとトランジスタは導通するが、これがニュ-ロン動作の基本となっている。本年度は、VMOSの基本機能を実験的に検証するとともに,より複雑なVMOS回路設計の研究を行った。基本動作検証のため、VMOSを通常のNチャンネルMOSプロセスで試作した。制御ゲ-ト電極は、結合容量を別途付与することにより様々な組合せの実験を行った。その結果,以下のような、予想通りの結果が得られた。即ち、各入力ゲ-トへの入力信号の線形和が所定の閾値を越えたときニュ-ロンは発火した。しかも、1つの制御ゲ-トの入力電圧を変化させることにより、発火の閾値を任意の値に設定できることも分った。2入力のVMOSで一方の電極を閾値調整電極とすることにより、閾値を電気信号で任意にかえられる「可変閾値トランジスタ」も実現できた。また,2入力VMOSの一方の電極をドレインと接続することにより,抵抗値可変の線形抵抗が実現できた。さらに,VMOSをソ-スフォロワ回路として用いることにより,高速のD/Aコンバ-ジョン回路が簡単に実現できることも分った。以上のように,VMOSトランジスタの多才な性能が実験的に明らかとなったため、現在CMOS構成のVMOS回路を設計しており、これにより,さらに複雑なニュ-ラルネットワ-クへの応用を研究していく計画である。
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