研究概要 |
現存超LSI開発の指導原理は、単位素子の微細化とこれによる素子集積度の増加である。しかしこのアプロ-チは、素子寸法の微細化による様々な物理的限界と性能の劣化をもたらしている。さらに膨大な数のトランジスタを相互に結線し、回路としての機能を創り出す配線形成は、設計論的にも、プロセス技術的にも非常に因難なものとなっている。本研究の目的は、基本素子であるトランジスタに、単体で脳神系細胞にも匹適する高度な働きをさせることにより、極めて少数の素子と配線で、高度なLSI機能の実現をねらったものである。 NMOS及びCMOSのプロセスで、二層ポリシリコンゲ-ト構造の新素子を試作した。この新しいトランジスタは、1つのフロ-ティングゲ-トと、フロ-ティングゲ-トと容量結合する多数の入力ゲ-トから構成されており、各入力ゲ-トの入力信号の重み付線形加算の結果が閾値を越えたときにトランジスタが導通する。トランジスタの導通をニュロンの発火に対応させれば正しくニュ-ロン上等しい機能をもっている。試作したニュ-ロンMOSトランジスタは正確にニュ-ロン動作をすることが確められた。また線形担抗や、1つのトランジスタで形成したDIAコンバ-タが理論通りの動作をすることも確めた。また,このニュ-ロンMOSトランジスタ(VMOS)を用いて従来の二値論理回路を設計すると素子数が1ケタ以上減らせることが分かった。4ビットのフラッシュAIDコンバ-タは従来398個のトランジスタが必要だったが、たった28個で実現できた。またコンピュ-タの心臓部である、全加算器も8個でできる(従来は50個)。これらの回路動作も実験的に確められた。さらに,外部信号の切り換えだけで、その論理機能を自在に切り換えることのできる,新しい論理回路も構成できることが分った。これは「やわらかいハ-ドウェア」の実現で,新しい回路概念である。
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