研究概要 |
脳の神経回路モデルの研究の結果,当研究代表者は,変形に強いパタ-ン認識システム「ネオコグニトロン」や,パタ-ン認識能力だけでなく,パタ-ンを切り出したり不完全パタ-ンを自動修復する能力もを持つ「選択的注意のモデル」などを発表してきた.今年度は,実用的な文字認識システムへの応用も念頭において,これらのシステムの能力をさらに向上させることを目標に研究を進めた. 1)英数字認識:ネオコグニトロンの原理を用いた文字認識のシステムの実験は,これまで,比較的パタ-ン数の少ない場合についてしか行なっていなかった.そこで今年度は,認識すべきパタ-ンのカテゴリ-数が増加したときの問題点を調べるために,英数字認識の実験を進めた.その結果,次のような点を明らかにした. a)学習パタ-ンを上手に選んで教師なし学習を行なえば,文字数が増加しても十分頑強なパタ-ン認識が可能である. b)認識すべきパタ-ンのカテゴリ-数が増大しても,認識に必要な回路規模はそれほど大幅に拡張する必要がない.例えば,10文字の数字認識の場合と35文字の英数字認識の場合を比較すると,認識すべき文字数は3.5倍に増えているのに,回路内の細胞数は,1.9倍に増やすだけで十分であった. 2)英文続け文字の認識:選択的注意のモデルの考え方に基づいて,筆記体で書かれた英文続け文字の認識,すなわち,続け文字の系列から1文字ずつ順番に切り出しながら認識していくシステムの実験を進めた.現在のところまだ少数の文字を対象にした小規模な予備実験であるが,期待どおりの動作を示すシステムが設計できることを計算機シミュレ-ションで示した.
|