研究概要 |
脳の神経回路モデルの研究の結果,筆者は,変形に強いパターン認識システム“ネオコグニトロン"や,パターンを認識するだけでなく切り出したり修復したりする能力のある“選択的注意のモデル"などを発表してきた.この一般研究では,これらのモデルの考え方に基づいた新しい視覚パターン認識システムの設計原理の確立を目指して研究を進めている. 本年度は特に,英文筆記体続け文字の認識システムに重点をおいて研究を進めた.選択的注意のモデルの考え方を用いれば英文筆記体の認識ができることは,小規模な実験ですでに確認している(平成2年度の実績報告書)が,本年度は,さらに大きな変形を受けた文字列でも扱えるシステムの実現を目指して研究を進めた. まず,回路内にフォワードの結合だけを持つネオコグニトロン型の回路を用いて計算機シミュレーションを行ない,折れ点検出細胞を回路に組み込むと,学習能力と認識能力が大幅に向上することを確かめた.次に,この折れ点検出細胞を,バックワード結合を持つ選択的注意のモデルにも導入する方法を考案した.この新しい回路構造を持つシステムに,種々の筆跡で続け書きされた英文筆記体文字列を入力し,計算機シミュレーションを行なった結果,文字の切り出しと認識の能力が,従来よりも格段に向上することを確認した. また,ネオコグニトロンと選択的注意モデルに共通の問題として,新しい学習方法の検討を進め,従来よりも高い汎化能力の得られる学習手法を考案した.
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