研究概要 |
金属中を成長する疲労亀裂は構造物の安全性を左右するので、限界長さに達するまでの時間を精度よく把握しなければならないが、本質的に確率現象なので、平均値を求めただけでは安全の推定には役立たない。かりに、分散まで求めても、高度の安全性が要求されるときは不十分であり、特に安全性に決定的な影響する最小寿命パラメ-タを含む疲労寿命の確率分布を決定しなければならない。このような目的のためには一般に、100個以上の試験片を用いて寿命分布を決定しても不十分とされている。 本研究は構造物の疲労に対する信頼性について疲労亀裂伝播挙動から推定する方法を検討した。一手法として応力拡大係数制御試験による疲労亀裂進展計測デ-タから、パリス則、(da/dN=C(△K/K_0)^m)、の材料パラメ-タを調べるとともに、亀裂伝播抵抗係数1/Cの自己相関関数を求めた。2種の高張力鋼(BS4360,L36E)を用いて行なった試験から、パラメ-タ,m,は近似的に正規分布に、1/Cは3母数ワイブル分布に従う結果が得られた。 本研究のメリットは少ない試験で疲労亀裂伝播寿命の確率分布を推定できることである。このようにして得たデ-タを用いて、非ガウス確率過程で材料抵抗の空間的分布のシミュレ-ションおよび疲労亀裂伸長のシミュレ-ションを行ない、荷重繰返し数あるいは亀裂がある長さに達するまでの荷重繰返し数等実際の実験と類似した結果が得られた。よって、構造部材の疲労亀裂伝播寿命解析に非常に有効な方法を与えるものと言えよう。
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