本年度は継続研究の最終年度であるので、これまでの研究成果の取りまとめを行った。 鉄筋コンクリート断面の曲げに対する復元力特性を解析的に調べた結果、梁断面の降伏強度発現時には、コンクリートの圧縮強度よりもコンクリートの剛性により圧縮のストレスブロックの形状が決まり、コンクリートの材料特性は降伏強度の大きさには影響せず、曲率に影響することがわかった。 梁部材の変形能に着目した実験的研究により、次のような知見を得た。普通強度鉄筋と普通強度コンクリートを用いた梁部材では、日本建築学会の終局強度型耐震設計指針による靱性評価は過小評価になっている。高強度材料を使用した場合は、同指針の最小補強筋比を満足していても脆性的な破壊となることがあり、靱性を保証する必要最小せん断補強筋量を定める必要がある。 高強度コンクリートを用いた内柱・梁接合部の実験では、接合部のせん断余裕度が小さいと、梁降伏後に接合部中央部での梁主筋の付着劣化によって接合部がせん断破壊した。梁主筋比が同じであれば、梁主筋の降伏強度が低いほどエネルギー消費能が大きく、梁主筋の付着指標を0.22以下にすれば良好な履歴特性が得られることがわかった。 梁降伏型の降伏機構を形成するRCフレーム構造について、梁の材端ばねの履歴特性をパラメータとした地震応答解析を行った結果、武田モデルを用いた場合と武田スリップモデルを用いた場合、梁の最大塑性率およびフレームの最大応答変形に大きな影響はなかった。
|