研究課題/領域番号 |
02403003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桑田 敬治 大阪大学, 理学部, 教授 (50028099)
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研究分担者 |
蒲池 幹治 大阪大学, 理学部, 教授 (40028163)
村井 久雄 大阪大学, 理学部, 助手 (50142261)
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キーワード | パルスFTーESR / 分子動力学的過程 / スピン分極の移動 / ラジカル対 / 短寿命中間体 / 励起三重項状態 / 磁場効果 / 電子スピン緩和時間 |
研究概要 |
化学反応の研究において重要な短寿命中間体の反応動力学的および分子動力学的研究を行なう目的で、平成2年度に試作した高感度、高速のパルスFTーESR装置の調整を完了し、同年度に購入したエキシマ-レ-ザ-を使用して光化学反応中間体の反応動力学的および分子動力学的研究を行ない、以下の成果を得た。 1.アルコ-ル溶液中の無水マレイン酸の光増感還元において、時間分解ESRの測定により、一次ラジカルであるアルコ-ルラジカルと無水マレイン酸の反応により生成する二次ラジカルへ一次ラジカルのスピン分極が移動することを見出した。この結果は、スピン分極の移動の観測が反応機構の解明に有用である事を示した。 2.生増感法により、1、3シクロジエン類の励起三重項状態の時間分解ESRの観測に初めて成功し、零磁場分離定数D^*が分子骨格のねじれに関連する事を見出した。 3.SDSミセル中の準安定ラジカル対の時間分解ESRを測定し、過渡吸収測定によるラジカル対の減衰速度に及ぼす磁場効果の観測結果とよい一致を見出し、ラジカル対の過渡吸収の帰属における信頼性を高めた。 4.pーキノン誘導体アニオンのパルスFTーESRにおいて、中性のキノン分子との間の電子移動による各吸収線の電子スピン緩和時間の違いを吸収線の強度の差として観測し、パルスFTーESRが分子動力学的過程をよく反映する事を見出した。さらに対イオンをNaイオンとした場合にパルスFTーESRに明瞭な超微細分裂が見出だされた。他方、通常の定常的ESR測定においてこの様な分裂は見出されず、対イオンを介しての電子移動による超微細分裂の消失が、パルスFTーESRには現われ難い事が分かった。
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