研究概要 |
高励穏分子の振動ダイナミックスについて、以下に述べる主な研究成果を得た。 1.SO_2の蛍光分散分光によって24,000cm^<-1>までの広いエネルギー範囲の約500の準位を同定し、その振動帰属を行なった。変角振動は調和的であるのに対し、2つの伸縮振動の非調和性は大きく、20,000cm^<-1>を超えると対祢、反対祢の伸縮振動の独立性が失われ始めることが判明した。 2.アセチレンの分散蛍光分光の測定より振動エネルギーの増加と共に準位の塊が段階的に発展し、3段階以上の階層構造を形成することが判明した。すなわち、準位の塊が、ある短時間での振動運動を意味すること、時間発展と共に、いろいろな振動モードが結合した固有状態に至ることが示された。とくに、トランス、シスの2つのCH変角振動が非調和結合した結果、HがC_2の周りを回転する運動が生れ、これがビニリデンへの異性化反応を誘起することが指摘された。 3.NO_2の光解離生成物のNO,Oの特定の量子状態をLIF分光によってモニターしながらNO_2の光解離レーザーの波長を走査し、PHOFEXスペクトルの測定を行なった。NO_2は準束縛振動準位を経て解離し、その解離速度は統計理論と一致すること、ただし、束縛準位毎の解離速度が揺らぐことを見いだした。 4.NO_2の解離限界に近いエネルギー領域の準位間の相関は極めて大きく、モード間結合が非常に強いことが結論去れた。その結果、解離速度の揺らぎは、各準位の固有状態の量子的揺らぎを表現するものと結論された。なお、NO_2の振電準位構造がエネルギーと共にその結分様式をどの様に反映するかについても、広エネルギーの範囲にLIF分光のデータの階層構造の解析によって明らかにされた。
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