研究概要 |
本申請課題は電子分子衝突により生成する励起種の赤外発光スペクトルを測定し、その励起解離過程を解明することを目的とする。赤外部は可視部にくらべ測定が困難なため、従来研究されていなかった。本年度は初年度であるので測定装置の整備に重点を置いたが、水素の励起解離により生成するH^*(4f)の測定をも行った。 1.赤外発光測定用分光器の整備……補助金によりフ-リェ変換赤外分光光度計(パ-キンエルマ-1725X型)を購入し、設置し、スペクトル測定の準備をした。本体基本システムのほか、MCT検出器・InAs検出器を購入し、中赤外・近赤外領域測定の高感度化を図った。 2.電子ー分子衝突室の整備……現有小型衝突室にタ-ボ分子ポンプを取り付け、測定の自動化と長時間の積算を可能とした。電子レンズを改良し電子ビ-ムの質を高めた。 3.電子ー分子衝突により生じる励起水素原子(n=4)のPaschen α線の発光スペクトルを予備的に測定し、発光断面積を(1.4±0.4)x10^<ー19>cm^2と算出した。Balmer線の寿命解析より求めたσ(4s),σ(4p),σ(4d)の値と組み合わせ、σ(4f)=(0.6±0.6)x10^<ー19>cm^2と決定した。 4.励起水素原子(4f)の生成に関与する水素分子の高励起状態は対称性より考え大きな角運動量を持たねばならないことを考えると、実測されたσ(4f)の値は意外に大きい。これは直接励起では考え難く、核間距離の大きいところでの前期解離の効果と帰属した。
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