研究概要 |
即に前年度の研究から、ス-パ-オキサイドアニオンと金属錯体との反応において、特殊なdー軌道,すなわちすべてのロ-ブが配位子で覆われていないdー軌道の存在の重要性が指摘されたが、今年度の研究において、パ-オキサイド付加体の反応性が錯体のdー列道の配向に大きく依存していることが明きらかになった。又酸素分子が直接的に金属イオンに配位している証拠が得らていない場合でも酸素分子の活性化がdー軌道との相互作用を介して生じ、その時上で述べた特殊なdー軌道が関与していることが明きらかにされ、dー軌道が酸素分子の活性化に密接に関連していることがわかった。以下にその詳細を示す。 (1)H(HPTB),H(HPTP),H_5(Lーpac)を配位子とする二核鉄(III)錯体は過酸化水素と反応して、パ-オキサイド付加体を形成する。今回,これらのパ-オキサイド付加体の反応性が用いる配位子に大きく依存していることがわかった。とくに(HPTB)とH(HPTP)は、その形状が良く似ているのにもかかわらず,錯体の反応性が大きく異なっていることは注目に値する。この原因を追及した結果,パ-オキサイド付加体の構造的な違いが反応性の違いとなって現われていることがわかった。これより、パ-オキサイドイオンとdー軌道との相互作用の仕方がパ-オキサイドイオンの反応性を大きく支配していることがわかった。 (2)一般的に言って、酸素分子の活性化には金属イオンが必要である。その時には酸素分子が直接的に金属イオンに配位している証拠が得られている場合が多いが,いくつかのニッケル(II)錯体がアルデヒドの存在下、オレフィンのエポキシ化を触媒できるような場合では、酸素分子の配位は定かではない。今回の研究で、このような場合でも、すでに指摘されている特殊なdー軌道が酸素分子の活性化に関与していることが明きらかになった。
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