研究概要 |
本研究は初年度および2年度に引続き吸収法を用いて金属錯体特にルテニウム(III)錯体の低い電子状態について明らかにすることを目的とし、研究を行なッた。 ルテニウム(III)錯体について、トリスβ-ジケトナト錯体ばかりでなく配位子場の異なるトリスビピリジンおよびヘキサアンミンルテニウム(III)錯体に範囲を広げてこれまでに得られた5000cm^<-1>〜6000cm^<-1>領域に現われる吸収帯について検討した。アンミン錯体、ビピリジン錯体共に、β-ジケトナト錯体に比べ高波数側に現れ、この領域の吸収帯は、三重に縮重した軌道の分裂によるものではなく、我々がすでに指摘した(d,d・)遷移によるものであることが明らかになッた。 さらにトリスβ-ジケトナトYb^<3+>錯体について10240cm^<-1>の吸収帯の振電バンドについての考察を行なった。室温での発光スペクトル、吸収スペクトル、および77Kでの発光スペクトルを比較して、励起状態の高い振動状態かにの発光が観測された。 FT-IR測定装置を使って発光スペクトルの測定を行った。近赤外領域の発光測定は市販されている発光分光器の感度が低いため分解能のよいスペクトルを得るのは困難でうる。このためFT-IR装置を用うればこの問題が解消すると期待した。ルビーロッド、Nd^<3+>ガラスにArイオンレーザーを光源として用い、発光測定を試みた。線幅の狭い発光スペクトルを得ることができた。しかし、強い発光極大の周りに現れる弱い振電バンドの検出について問題点があり、このような発光スペクトルの測定には現在のアーリエ変換のプログラムの修正が必要であること、また外部光学系の調整が重大であることが明らかになった。
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