研究概要 |
真空蒸着法およびイオンプレ-ティング法によりクロム(Ch),チタン(Ti)あるいはシリコン(Si)の薄膜を形成させた。薄膜の結晶配向性とモルフォロジ-におよぼすアルゴンガス圧力とバイアス電圧あるいはイオン化電流の効果を調べた。金属の種類によらず、結晶配向性とモルフォロジ-は類似した特性を示した。Crでは(110),Tiでは(002),Siでは(220)の配向が、アルゴンガス圧が低い時,バイアス電圧が低い時あるいはイオン化電流が小さい時に現われ,これらの面はすべて表面エネルギ-が最小な面であることがわかった。アルゴンガス圧を著しく高くすると膜はすべてアモルファスとなった。アルゴンガス圧の増加とバイアス電圧の減少に伴い,金属薄膜のモルフォロジ-は細い柱状晶,繊細状組織さらに微細な粒状組織に変化した。これらの変化は、ガス吸着モデルを用いて説明できることがわかった。一方、反応性イオンプレ-ティング法によりCrN,TiN等の化合物薄膜を形成させた。窒素ガス圧によって反応生成物の組織だけでなく、モルフォロジ-や結晶配向性も変化した。CrNでは窒素ガス圧の増加とともに柱状晶から微細な粒状に変化した。この傾向は金属薄膜の場合と類似しており、吸着インヒビタ-のモデルで説明できた。形成した薄膜の硬度,耐摩耕性および耐食性は、窒素ガス圧,バイアス電圧,イオン化電流に依存した。インピ-ダンス特性と表面均一性も調べた。 以上のことから、PVD法による薄膜の作製において、蒸着金属の表面エネルギ-の異方性が分かれば、作成条件によってその物質の薄膜がどの結晶面の配向を示すか、またどのような組織を呈するかを吸着モデルの観点から予測することができるものと考えられる。このように12作成した薄膜の超音波顕微鏡による非破壊観察,密着性,表面弾性特性について検討中である。
|