研究概要 |
バチルスブレビスを宿主とする蛋白質分泌生産システムを用いれば、ヒト蛋白質の生産が可能となったが、その効率は細菌由来の蛋白質の生産に比べればはるかに低い。その効率の差はそれぞれの蛋白質の分泌過程における構造変化の差に原因があると考察し、本研究では分泌過程における蛋白質の高次構造の生成を支配する酵素類、即ちペプチジル・プロリル・シストランス・イソメラ-ゼ(PPI)やプロテイン・ジスルフィド・イソメラ-ゼ(PDI)、さらに蛋白質の高次構造を認識して分解するプロテア-ゼなどの機能を解析した。 PPI活性をバチルスブレビスの培養上澄液と細胞抽出液中に見出したので、本酵素を精製してその性質を明らかにし、さらにその遺伝子をクロ-ン化する過程にある。PDI活性は本菌の細胞内に見出され、その性質は細菌に広く見出されるチオレドキシンに類似していた。本酵素についても精製を進め、その性質について詳細な検討を加えようとしている。本酵素の遺伝子もクロ-ン化を行っており、この遺伝子を用いて本酵素の蛋白質分泌に対する役割等を明らかにする。一方、細胞内で異種蛋白質を特異的に認識して分解することが知られているlonプロテア-ゼ様の酵素の遺伝子を本菌ゲノムよりクロ-ン化し、その全ヌクレオチド配列を決定した。その配列から推定される分子量は87,400で大腸菌のlon遺伝子と高い相同性(61%)を示し、分子のほぼ中央にATP結合部位を有していた。このlon遺伝子を利用してバチルスブレビスからlon遺伝子欠損変異株を作製しその生理作用を研究した。その結果、本遺伝子は本菌にとって必須のものではないが、分泌過程で異種蛋白質や折りたたまれていない蛋白質を本酵素が分解している可能性が示唆された。
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