研究概要 |
バチルス ブレビスを宿主とする蛋白質分泌生産システムを用いれば、ヒト蛋白質の生産が可能となったが、その効率は細菌由来の蛋白質の生産に比べれば一部の例外を除いてはるかに低い。その効率の差はそれぞれの蛋白質の分泌過程における構造変化の差に原因があると考察し、本研究では分泌過程における蛋白質の高次構造の生成を支配する酵素類、即ちペプチジルプロリルシス・トランスイソメラーゼ(PPI)やプロテイン・ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、さらに蛋白質の高次構造を認識して分解するプロテアーゼなどの機能を解析してきた。 本年度はバチルス ブレビスのPDI様酵素すなわち、蛋白質ジスルフィド結合生成酵素(DSB)について焦点をしぼって研究した。まず、酵素の精製を行ったところ、培養上澄液中にのみ活性が見出された。次に、大腸菌の鞭毛機能を失った変異株を用い、その機能回復に必要な遺伝子を相補するようなバチスル ブレビスの遺伝子をショットガン クローニングにより検索した。約12万株の形質転換体を調べた結果、本菌のDSB遺伝子を見出した。そのヌクレオチド配列を決定することにより、分子量が13,000で、DSBに特徴的なCysGlyTyrCysの配列を有し、分泌性の蛋白質であることを明らかにした。従って、本酵素が分泌した蛋白質のジスルフィド結合成形を促進する活性を有することが分り、蛋白質の分泌に伴う構造変化に大きな役割を有することが強く示唆された。
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