研究概要 |
平成2年度に受けた補助金により分離用小型超遠心機(日立・CS120)およびフライングスポットスキャナ-(島津・CSー9000)を購入したことにより,本研究は計画通り順調に進展した。すなわち,αーコネクチンに由来する分子量約110万の分子断片の単離・精製にあたっては分離用小型超遠心機が効率よく稼動し,SDSーPAGEゲルの分析では高感度のデンシトメ-タ-であるフライングスポットスキャナ-により精度の良い結果が得られるようになった。平成2年度にはコネクチンとCa^<2+>の結合性について追究したが,得られた新知見は以下の通りである。1.牛肉,豚肉および鶏肉の熟成中にも家兎肉の場合と同称に不溶性のαーコネクチンが可溶性のβーコネクチンと分子量約110万の分子断片に分割されることが明らかになった。2. ^<45>Caを用いて調べた結果,上記の現象はCa^<2+>の結合によって誘起され,10^<ー4>MCa^<2+>で変化量が最大になることが明らかになった。3.分子量110万の分子断片を単離・精製して抗体を作成し,間接免疫蛍光法並びに免疫電顕法で調べた結果,この分子断片は筋原線維のZ線寄りの部位に局在することが明らかになった。以上の新知見は,食肉の熟成中に筋漿Ca^<2+>濃度が10^<ー4>Mに上昇するとαーコネクチン分子によって構成されているコネクチンフィラメントがその全長の約3分の1の部位で非酵素的に切断されることを明示している。既に,骨格筋が食肉に変換される過程で弾力性を失うのは不溶性αーコネクチンが可溶性βーコネクチンに変化するためであることを報告しているが,上記の新知見は本研究代表者が提唱している「食肉軟化のカルシウム説」に有力な根拠を提供するばかりでなく,生筋におけるコネクチンの生理的機能の解明に関しても寄与するところ大である。
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