研究概要 |
平成2年度および平成3年度に受けた補助金で購入した分離用小型超遠機をはじめ,高速液体クロマトグラフィーなどの備品類を有効に活用して本研究は順調に進行した。今年度の研究施計画に従い,1.パラトロポミオシンの精製法の改良および2.パラトロポミオシンの局在移動と熟成に伴う硬直結合の脆弱化の関係について追究し,以下の成果が得られた。1.Hasslbach-Schneider溶液によって筋原線維からパラトロポミオシンを抽出し,硫安分画およびヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーによりパラトロポミオシンを簡単に精製することができるようになった。2.この改良法で得られたパラトロポミオシンを抗原として抗パラトロポミオシン抗体を作成し,間接蛍光抗体法によってパラトロポミオシンの筋原線維内局在移動を調ベるとともに,硬直結合の脆弱化の指標として死後硬直時に短縮したサルコメアの長さの復元を測定した。鶏肉,豚肉および牛肉のいずれにおいても,パラトロポミオシンが局存移動して細いフィラメントのアクチンに結合するとアクチン・ミオシン間に形成されていた硬直結合が脆弱になり,サルコメア長が復元することが明らかになった。食肉の熟成に伴って筋漿Ca^<2+>濃度が0.1mMに上昇するとパラトロポミオシンの局存移動が起こり,硬直結合の脆弱化を誘起し,食肉の軟化をもたらすという事実を見出した。この新知見により,硬直結合の脆弱化は起こり得ないという従来の定説は誤りであったことが判明した。
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