研究概要 |
本研究は,極めて複雑な構造を有し,強い生理薬理活性をもつマクロリド,ポリエーテル抗生物質などを平易で選択的高効率的に合成するための方法論を開発し,これによって現代精密有機合成化学の進歩に寄与するとともに,次代の創薬への合成化学基盤の飛躍的向上に資することを目的になされている。以下,本年度成果の概要を記す。 1.マクロリド合成:最近我々が開発したMM2-CONFLEX計算とNMR解析によるセコ酸,マクロ環のコンホメーション制御法を複雑なマクロリド合成に応用し,エリスロノリドAの超高効率合成に成功したが,これをオレアンドノリド,ランカノリド合成に応用し,それぞれのセコ酸を合成し,マクロ閉環を検討中である。ヒグロリジンモデルのセコ酸合も近々完成する。 2.ポリエーテル合成:サリノマイシン,イソラサロシド合成研究の成果の上に立って,リソセリン系ポリエーテルの代表抗生物質リソセリン自体の合成に成功し,さらに改良合成も完成した。 3.ポリエーテルマクロリドの合成:強い抗腫瘍活性と極めて複雑な構造を有する海洋産ポリエーテルマクロリドは,ハリコンドリンBに代表される一群の化合物である。ハリコンドリンBは主鎖C54ケ,不斉中心32ケ有するが,現在までにC_<1〜13>,C_<16〜27>,C_<28-36>,C_<39〜54>のフラグメントの立体選択的合成が完了し,現在,それらフラグメント間の縮合とマクロラクトン化の検討のための中間体の大量合成が進められている。次年度中に立体選択的全合成を完成させる予定である。
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