研究概要 |
高圧下では多数の物質が高密度相へ転移することが知られているが、クエンチ法では凍結できない不安定相の場合には高圧下のX線回折により構造を決定し、相平衡関係を調べる必要がある。本研究では既設の250トンキュ-ビックアンビルプレスに、60kV,200mAの回転対陰極型強力X線源を組み込み、SSDを用いたエネルギ-分散法により、最高圧力8GPa,最高温度800℃までのX線回折実験を行なうことが目的である。装置設計にあたっては、線源と検出器を同一架台にのせ、光軸の調整を容易にすること、試料と線源および検出器との距離をできるだけ短かくし、効率の良い計測が行なえることなどの配慮をした。粉末試料はボロン・エポキシ圧媒体中に埋めこんだグラファイト加熱体に挿入し、一辺6mmのタングステンカ-バイトアンビル6個により加圧する。圧力較正の内部標準としても用いられるNaClの格子定数の圧力変化を測定し、装置が十分な性能を持っていることを確かめた。次年度以降、酸化物、丹化物あるいは金属合金系の高圧相転移実験を行なう計画である。装置の設計製作と平行して、クエンチ法による圧力誘起構造相転移の研究を実施した。このうちMnF_2およびAnーGe,AgーGe合金に関する実験結果は公表ずみである。さらにフルオライトおよびその関連化合物としてBaF_2,La_2Zr_2O_7,あるいはSm_2O_3,Gd_2O_3などの高圧相転移についても実験を行ない、一部は本年春の日本化学会年会に発表する予定である。又関連する研究として、M_2O_3(M=Sc,Y,Sm,Gd,In)およびルチル型SnO_2,PbO_2,FeTaO_4について、衝撃誘起相転移の研究を行ない、論文を発表した他、軸圧および静水圧下のルチル型構造からの相転移に関する分子動力学計算を行ない、実験との対比をした。
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