研究概要 |
本年度は以下に列挙するように当初計画通り順調に研究が進捗した。 A 分子設計法,抑制変異法,進化分子工学手法を用いてイソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナ-ゼの各種キメラ酵素について,耐熱性を回復する点変異を見つけ,このうち2種の安定化した変異体酵素タンパク質を精製した. B キメラ酵素4M6Tと2T2M6TのX線構造解析が進んだ(勝部教授、田中教授らとの共同研究).これに基づいて上記の点変異と安定化の関係を解釈した. C DSC(走査示差熱量計)を用いて、キメラ酵素の熱変性反応の熱力学的解析を行い、各ドメインが独立に変性することを明らかにした.特に、キメラ酵素2T2M6Tの熱変性反応においては、特定の条件の下でDSCサ-モグラム上に二つの完全に分離したピ-クが現われる.変異体を用いて各ピ-クがいずれのドメインの熱変性を表しているかの帰属を行った. D DSC、CDスペクトルを利用して、熱変性反応の可逆性を検討した。pH10などのアルカリ性の条件の下では、変性体の凝集が起こらないこと、第一ドメインのみの変性反応は可逆であることが分かった. E 超好熱菌からイソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナ-ゼを精製し酵素的性質と部分アミノ酸配列を決定し,遺伝子クロ-ニングを試みた. F 昨年度に開発したleuB遺伝子を利用した高度好熱菌の遺伝子操作系の改良を進め,leuB,C遺伝子欠損とイソロイシン要求性の関係を解析した.また,新しいマ-カ-遺伝子として両方向選択が可能なウラシル生合成系遺伝子を単離し,これを利用した高度好熱菌を宿主とする形質転換系の開発を試みた.
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