研究概要 |
倍数種とその祖先型低倍数種の核ゲノムの差異を分子遺伝学的手法を用いて調べ,倍数性進化の分子的基礎を明らかにするため,パンコムギとその祖先種を用い,次の4項目について研究を進めている。それぞれの項目について本年度得られた結果は次のとおりである。 A)基盤的研究ーー2つの研究を行った。始めにパンコムギ品種CSの40の単腕染色体系統を用い,Liu・Tsunewaki(1991)がRFLP連鎖地図上に同定した座位のうち130座位の座乘染色体腕を決定した。その結果,12染色体についてRFLP地図上の動原体の位置を特定した。次に同じCSの第2〜4同祖群染色体の部分欠失系統48を用い,これら9染色体の細胞学的地図とRFLP地図の対応関係を決定した。 B)ゲノムレベルの研究ーー上記の研究に用いたゲノミックDNAクロ-ンの中から58を選んでプロ-ブとし,2倍性コムギ3種3系統,4倍性コムギ13種33系統,6倍性コムギ6種11系統の核DNAのRFLP分析を行い,倍数種とその低倍数性祖先種の間のゲノムの相同性を推定し,これらの間の系統関係を確立した。 C)染色体レベルの研究ーーcDNAクロ-ンをプロ-ブとするRFLP分析によって,同祖染色体の機能的相同性を探るための研究に着手した。現在までに,ヒストンタンパク質遺伝子4,ヒストン遺伝子結合タンパク質遺伝子5のクロ-ンをプロ-ブに用いて異数体分析を行い,5種のヒストン遺伝子結合タンパク質の遺伝子はそれぞれ同一同祖群に属する3本の染色体のすべてに保存されていることが判明した。ヒストンタンパク質遺伝子については,ヒストン1遺伝子のみ第5同祖群の3本の染色体すベてにみられたが,他ヒストンタンパク質の遺伝子はすべて多数の染色体に分散して存在していた。 D)遺伝子レベルの研究ーー現在まだ準備段階にある。
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