研究概要 |
ウニ卵ゼリー層を構成している物質には精子活性化ペプチド(SAP)と精子先体反応誘起の主物質であるフコース硫酸タンパク質複合体(FSG)及びシアロ糖タンパク質の3種類がある。SAP-I前駆体cDNAのクローニング、塩基配列の決定の結果、SAP-I及びその類似体は前駆体タンパク質中でリジンを挟んでタンデムに並んでいることが明らかになった。FSGに対する抗体と発達段階の異なるバフンウニ卵巣を用いた免疫組織化学的研究の結果、FSGは卵成熟の過程で卵巣中の栄養細胞中に見られる特殊な顆粒で合成され、成熟卵の表面に付加されることが明らかになった。SAP-I前駆体cDNAから逆転写酵素によって合成したRNAをprobeとしたin situ hybridizationの結果、SAP-Iも卵成熟の過程で卵巣内の栄養細胞で合成され、卵成熟に伴って成熟卵の表面に付加されることが明らかになった。SAP-Iはウニ精子の細胞膜上のFSGとは異なる2種の特異的受容体(高親和性、低親和性)に結合し、精子の、1)Na^+/H^+およびCa^<2+>/H^+交換系の活性化、2)細胞内pH(pH_i)の上昇、3)cAMP,cGMPレベルの上昇、4)リン酸化体の膜結合型グアニル酸シクラーゼ(21残基のシグナルペプチドを含む1125残基のアミノ酸で構成されており、分子の中央に一つの膜貫通領域があり、22残基のホスフォセリンを持つ)の一過的な活性化及びそれに続いて脱リン酸化され(20残基のホスフォセリンが脱リン酸化される)、不活性化を引き起こす。SAPによる精子のpH_iの上昇、呼吸促進及びcGMP濃度上昇に対する濃度-効果曲線から得られるEC_<50>値と放射性ヨウ素標識SAP-Iの精子、精子細胞膜分画に対する結合実験から得られるKd値を比較すると、高親和性受容体はpH_iの上昇及び呼吸促進に、低親和性受容体はcGMP濃度の上昇すなわち膜結合型グアニル酸シクラーゼの活性化に関係していると考えられる。71kDa SAP-I結合タンパク質(C-末端に膜貫通領域がある)は220kDa WGA-結合タンパク質と会合しているものと考えられる結果を得た。バフンウニ精子をビオチン化すると、膜表面に局在することが明らかな数種のタンパク質(220kDa WGA-結合タンパク質、128kDa膜結合型グアニル酸シクラーゼ、71kDa SAP-I-架橋タンパク質、63kDaタンパク質)に加えて、50kDaタンパク質がビオチン化される。このビオチン化50kDaタンパク質はバフンウニFSGと種特異的な相互作用した。
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