研究概要 |
受容体と結合するホルモンを標識することにより,ホルモンー受容体複合体の細胞内行動を追跡し,受容体分化と標的器官の機能分化の関係を調べる。また,受容体分化に必要な液性因子を受容体定量により検索することを本年度の基本的な目的として,以下の成果を得た。 1.ゴナドトロピン受容体調節機構でマウス精巣のFSH受容体について従来われわれが得たダウンレギュレ-ションの知見が,C57BL/6N以外の系統にもあてはまるか否かを調べ,BALB/C,BBA/2N系統にも同様の現象を認めた。次に,この現象を分子レベルで解析する第一歩として,受容体の遺伝子と蛋白質の情報を得る目的で,マウス精巣のゴナドトロピン受容遺伝子のクロ-ニングを試みた。クロ-ニングはマウス精巣cDNAで作製されたラムダバクテリオファ-ジライブラリ-を用いて行い,3個の陽性クロ-ンを得た。現在その同定を進めている。(朴,川島) 2.プロラクチン受容体のエイジング過程を解析するため,プロラクチンの子宮に対する作用の基礎デ-タを得る目的で,子宮内膜組織をインスリン・トランフェリン・上皮増殖因子・コレラトキシン・牛血清アルブミンなどを添加したHam's Fー12とDMEMの混合培地中で培養する系を確立した。現在,培地にプロラクチンを添加し,内膜組織細胞の増殖率の変化を検討中である。また,子宮のプロラクチン受容体の局在をオ-トラジオグラフィ-で調べている。(守) 3.魚類脳の終神経系にはゴナドトロピン放出ホルモン免疫陽性細胞があり,これは視束前野ー脳下垂体系の陽性細胞とは独立の構造をもち,機能分化している知見を得た。終神経のゴナドトロピン放出ホルモン陽性細胞群が神経修飾物質としてはたらいている可能性が,電気生理学・形態学(免疫電顕)・行動学的手法によって示唆された。(岡)
|