研究概要 |
主として(1)この研究に必要な走査電顕を購入し,その設置・調整を行なった。(2)計画にそって観察を開始した。成果の概要は以下の通り。 1)カキ類の殻にみられる軽量構造の記載。カキ類の殻で空隙をつくり殻を軽くしている構造には,空洞,樹状,カ-ドハウス,ハニカム,の4タイプがあることがわかった。この順に構造が組織化され,予知可能な構造となっている。後2者は樹状構造に分類される方解石結晶を基盤として成長していることもわかった。 2)カキ類の固着部分の殻には,従来二枚貝の構造タイプとして報告されたことのない構造が発見された。これは,約5μmの間隔で畝状になった方解石とその間の溝を埋める有機物からなるもので,ridgeーandーfurrow構造とよぶことにした。この構造は,固着部に特有で基盤から離れると直ちに通常カキの殻表面にみられる稜柱構造に移化する。生体が破壊された殻を修復する実験の結果からみると,この構造は,外套膜先端部が,分泌した殻物質を固着基盤に押しつける行動をとるときのみに形成されるので,このような押しつけによって形成される構造と判断される。しかし,他の固着性二枚貝ではまだこの構造は見出されていない。 3)ザルガイ類の中には藻類と共生しているものがいる。この類のうちアオイガイ類では,殻の一部に窓のような透明に近い光を通す部分がある。殻のなかで光を通しにくい部分は普通にみられる交差板状構造をなしているのに対し,“窓"の部分は稜柱構造に近い未知の結晶配列をしていることがわかった。しかし,共生藻類をもちながら,オオヒシガイやカワラガイにはこのような“窓"の構造はみられない。ザルガイ類の光透過構造は,必ずしも共生藻類の存在に対応した構造ではないことがわかった。
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