研究概要 |
琵琶湖と6河川に溯上する約600尾のミトコンドリヤDNAを分離し,9種類の6塩基対識別制限酵素で切断して泳動した結果,26種類のゲノム型があり,型間で0.2〜2.8%塩基が置換していた.どの集団でも特に河川ではゲノム型Gー1が多いが琵琶湖では河川には少ないG2〜5の合計が50%ほどで,河川と琵琶湖の集団の間には明らかな差があることが示された 50年以上にわたりその場で繁殖し,溯上してくるアユの8〜10倍量程度の琵琶湖産アユを放流している信農川では,mtDNAのゲノム型の頻度からみて,琵琶湖はほとんど繁殖に加わっていないと判定された.これは,近年琵琶湖産が放流されている物部川,伊尾木川でも同様で一方,三陸の河川では一部湖産が生殖に参加して残っていることが示された.湖産,人工継代飼育アユ,地元産が放流されている信農川の産卵場にはこれが一様に混合したとき期待される頻度での9月中,下旬,10月中旬ともにGSIが大きいアユが集まり,遅い時期でも湖産が産卵に参加する可能性が示され,湖産の繁殖への参加の問題はふ化稚魚から海中生活までの間に追跡がしぼられた.浦佐のヤナで9月と10月に捕獲されたアユは一方が琵琶湖主体,他は人工継代アユが主体であることがmtDNA,アイソザイムいずれでも一致して示され,成群構造があることが示唆された. 人工継代アユ系統は天然より著しく変異性が低く,特にmtDNAでは単型化と特定の遺伝子型への固定による特徴化が明らかに示されることが判明した. 現在,譛法によるmtDNAの微量分析法が検討されつつある.
|