研究概要 |
平成3年度の研究では、ジゴキシゲニンELISA法によるサザンハイブリダイゼーション法の検討を行なった。これまで肝臓や卵巣などの組織を5〜10g要した分析を凍結やアルコール固定した100mg以下の筋肉や稚魚の脂鰭でもDNA分析を可能とし,河川に遡上する稚アユを材料に直接分析しRFLP分析の常法化する事ができた。 平成4年度の研究ではPCR法を用いたmtDNAの増幅の検討を行い,アユmtDNAを材料にmtDNA上のDループをコードスル領域の増幅に成功した。個体ごとに増幅したDループ領域を5種類の4塩基認識の制限酵素で分析した結果,先に報告した6塩基認識の制限酵素分析と同様にDループ領域でも遺伝子型の組成は河川間で統計的な有意差は認められなかった。このことから河川に遡上してくる海産アユは海を通じて互いにある程度混合し、河川間の遺伝的分化は小さいことが示唆された。また,Dループ領域内の集団内、集団間の遺伝的変異量をmtDNA全ゲノムを6塩基認識の制限酵素で分析した結果と比較するとDループではmtDNA全ゲノムに対してそれぞれ3.4,3.7倍の変異量を持ち、集団研究および遺伝的標識としてDループ領域のPCR法による増幅と4塩基対切断による型分析が有効であることを示した。
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