研究概要 |
平成3年度の計画に沿って研究を進め以下の成果を得た。 1)生殖機能系細胞(卵胞、卵管、子宮液)分泌液組成の解析:家畜の材料が入手できなかったので、ラットで卵管分泌液の採取法、測定法の諸条件を検討した結果、酵素周期法により超微量(n1,10^<ー9>m1)当りの中間代謝物の測定が可能となったので、妊娠第1日目からの卵管分泌液中のグルコ-ス、乳酸、ピルビン酸の各濃度を測定した。その結果、乳酸が最も高く179.9±54.9mM,ピルビン酸44,6±39,7mMであり、グルコ-スはわづかに9.1±7.7mMであった。初期発生時胚のエネルギ-代謝の特性が明らかになった。2)卵胞細胞、卵管上皮細胞、マウス線維芽細胞の大量培養法の検討:これら細胞のうち卵胞細胞の無血清培地での1lフラスコでの多量培養法が何とか可能になった。しかし、卵管上皮と線維芽細胞の無血清培地での培養は難しく、現在検討中である。3)卵子の共培養細胞の役割:卵胞細胞、線維芽細胞とを共培養した結果牛IVF胚の胚盤胞への発生割合は30〜35%前後で殆ど差がなかった。インタセルを介した共培養を行ったところ、直接共培養した場合と胚発生率に全く差がなかったことから、胚発生に対す共培養細胞の役割は液性因子を介して発生を促進していることが明らかになった。4)卵胞細胞培養液上清液での牛IVF胚を培養した結果、胚発生が共培養法程ではないが胚盤胞まで発生することが明らかになった。そこで、無血清培養液で卵胞細胞を培養した培養上清液を用い、牛IVF胚を培養しても前記と同様に胚発生を促進することが確認された。5)発生促進因子の解析:上述の結果を基に共培養系における胚発生を促進する液性因子を解析するために、まず、無血清培養液での培養系によって多量の培養上清液を採取し、濃縮液について、発生促進効果の割合を解析すると同時にどんな物質であるかを解析する。
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