マスト細胞の線維芽細胞依存性増殖機構の解析

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02404030
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
• 研究分担者: 辻村 亨 大阪大学, 医学部, 助手 (20227408) ; 春日井 務 大阪大学, 医学部, 助手 (80214310) ; 廣田 誠一 大阪大学, 医学部, 助手 (50218856) ; 野村 慎太郎 大阪大学, 医学部, 助教授 (80159087)
• キーワード: マスト細胞 / stem cell factor / W遺伝子座 / Ws遺伝子座 / レセプタータイロシンキナーゼ / マスト細胞腫 / マスト細胞欠損動物

研究概要

マスト細胞の線維芽細胞依存性増殖はマスト細胞側に発現しているc-kitレセプターに、線維芽細胞に発現しているstem cell factor(SCF)が結合することによっておこる。平成5年は本研究の最終年度であるので、平成2年度から行なってきた研究を総合するための穴をうめ、さらに、本研究期間中にみつかった現象の解析を行って論文として完成さすことをめざした。1)Ws/Wsラットはc-kit遺伝子に小欠失を持つため、マスト細胞を欠損する世界で最初に発見されたマスト細胞欠損ラットであるが、この小欠失を持つc-kit遺伝子からつくられたc-kit蛋白の特性についてはしらべていなかった。我々はWs/Wsラットと正常対照(+/+)ラットの骨髄細胞を、インターロイキン3(IL-3)存在下で培養し、培養マスト細胞を得て、c-kitカイネースの活性を測定した。Ws/Ws培養マスト細胞では、c-kitカイネース活性がまったく欠損するわけではないが、大幅に低下していた。Ws/Ws培養マスト細胞のin vitroの増殖能力や形質転換能力、in vivoの症状はc-kitカイネース活性が大幅に低下しているが、少し残存していることが説明された。2)W^<sh>/W^<sh>マウス由来の培養マスト細胞を用いた実験により、W^<sh>突然変異遺伝子がc-kitのコーディング領域の異常でないと推定されたが、本年はin vivoでの知見を加え、W^<sh>がc-kitの制御領域の異常であるらしことを一層確実にした。3)W^n/W^nマウス由来の培養マスト細胞を用いて、W^n突然変異遺伝子が生産するc-kit蛋白質の特性をしらべた。4)今まで知られていたc-kitの突然変異は機能の低下をおこすもののみであったが、ヒト、マウス、ラットのマスト細胞腫細胞株で、同一の点突然変異により、SCFが結合しなくても、c-kitが活性化していることを発見した。

研究成果

• [文献書誌] Onoue,Hitoshi: "Absence of immature mast cells in the skin of Ws/Ws rats with a small deletion at tyrosine kinase domain of the c-kit gene" American Journal of Pathology. 142. 1001-1007 (1993)
• [文献書誌] Kasugai,Tsutomu: "Infection of N.brasiliensis induced normal increase of basophils in mast cell-deficient Ws/Ws rats" Blood. 81. 2521-2529 (1993)
• [文献書誌] Tsujimura,Tohru: "Mast cell number in the skin of heterozygotes reflects molecular nature of c-kit mutation" Blood. 81. 2530-2538 (1993)
• [文献書誌] Arizono,Naoki: "Infection of N.brasiliensis induces development of mucosal-type but not connective tissue-type mast cells in Ws/Ws rats" Blood. 81. 2572-2578 (1993)
• [文献書誌] Kitamura,Yukihiko: "Development of mast cells and basophils:processes and regulation mechanisms" American Journal of Medical Sciences. 306. 185-191 (1993)
• [文献書誌] Hirata,Tatsumi: "Stem cell factor induces outgrowth of c-kit-positive neurites and supports the survival of c-kit-positive neurons in DRG" Development. 119. 49-56 (1993)
• [文献書誌] Kitamura,Yukihiko: "Immunopharmacology of Mast Cells and Basophils" Academic Press, 232 (1993)
• [文献書誌] Kitamura,Yukihiko: "Gann Monograph on Cancer Research,Growth Factors in Cell Growth,Morphogenesis and Transformation" Japan Scientific Societies Press,Tokyo(in press),