研究概要 |
1.無菌環境下における骨髄移植による難病の治療:平成2年4月から平成3年3月までの間に無菌環境下において骨髄移植を行なった症例は26例であり,そのうち同種骨髄移植は20例,自家骨髄移植は6例である。同種骨髄移植20例の内訳は急性白血病9例,慢性骨髄性白血病2例,悪性リンパ腫2例,再生不良性貧血3例,ファンコニ貧血2例,ハ-ラ-症候群1例,ゴ-シェ病1例であり,自家骨髄移植6例の内訳は乳癌3例,卵巣癌3例である。同種骨髄移植のうち,再生不良性貧血の1例は第1回目の骨髄移植後において移植片が拒絶されたので,2カ月後に同じドナ-から2回目の移植を行ない,成功している。その他の症例はいずれも骨髄移植が成功し,現在全例生存中である。自家骨髄移植例では前処置としてエンドキサン,サイオテパ,ピラルビシン,カルボプラチンなどが投与され,6例中1例が1カ月後に再発したが他の症例は現時点においてまだ寛解中である。2.骨髄移植に伴なう合併症の対策:GVH反応に対してはシクロスポリンを投与し,血中濃度をモニタ-しながら投与量を調節して,重篤なGVH反応は予防されている。サイトメガロウィルス感染症に対しては,患者の尿中のウィルスを経時的に検査し,ウィルス感染をチェックし,ウィルス感染の疑われる場合にはガンシクロビルをすみやかに投与してこれをコントロ-ルしている。またサイトメガロウィルス感染症の予防対策としてウィルス抗体陰性の供血者からの輸血を行ない,満足すべき成績がえられている。一般細菌による感染症の対策としては,バンコマイシン,トブラシンまたはポリミキシンB,マイコスタチンなどの非吸収性の抗生物質の経口投与と吸入,無菌操作などを行ない,好成績をえている。また好中球減少に対しては,GーCSFを投与し,好中球減少期間の短縮,無菌治療期間の短縮,発熱日数の減少,重症感染症の発症率の低下などの成果をえている。
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