研究概要 |
肝臓は生体内の種々の代謝の中心臓器である。すなわち体内で生産された老廃物の排泄にとどまらず、蛋白の合成、脂質の代謝等複雑な機能を一臓器で行っている。人工肝開発の最終目的はこれらの機能の全てを代行する事にある。このプロジェクトは継代培養肝細胞の有する機能を人工肝の一部に応用するための研究である。 われわれの樹立したヒト肝癌由来細胞株は6株におよび、現在も鋭意樹立を試み新たな樹立株の可能性がでてきている。このうちJHHー4,5,7は無血清培養可能となっている。蛋白代謝の面よりアルブミン、レチノ-ルバインディング蛋白、AFPなどの肝特異蛋白を産生していることをimmunoprecipitation,western blotting,metobilic labeling法により確認し蛋白代謝に関しては肝特異の機能を保有維持していることが明かとなった。さらにこれらの細胞のアンモニア代謝能や、ビリルビン代謝能、アミノ酸代謝につても検討中である。 一方大量培養法の確立のため、フォロ-ファイバ-培養法について検討を行った。まずJHHー7株を用いてフォロ-ファイバ-繊維の違い、あるいは繊維のコラ-ゲン処理による株細胞の繊維に対する付着に差異の存在することを確認した。フォロ-ファイバ-内で細胞を順調に増殖させるためには、株細胞がファイバ-に付着するまでの処置、還流培養液と細胞数の比、あるいは還流速度が極めて重要であることが明確になった。 さらにアルブミンの産生のメカニズムを知ることは、より効率のよい人工肝作成には重要な要素である。長瀬らが開発した血清中アルブミンの極めて少ない、無アルブミンラットより、他に先駆けて4株の樹立細胞の作成に成功した。これらの細胞よりアルブミン合成を惹起するための、因子を明かとするため細胞生物学的見地より検討中である。
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