研究概要 |
増殖因子の同定に必要な、出来るだけ大量の精製因子を得ることを目的として、増殖因子の純化、増殖因子の測定法について検討した。 <1、患者血清由来増殖因子の分離精製。>___ー プ-ルした複数患者血清2,000mlを材料とし、Pー4カラム、monoQ,YMCーpack Dial 120,CHEMCO3C_<18>カラムを用い増殖因子を単一ピ-クとして採取し、cell line化した神経線維腫perineural fibroblastsを標的細胞とし、competitive binding assayで患者血清の増殖因子を測定した。その結果神経線維腫を有する患者9名中6名で増殖因子の存在を確認した(0.43±0.26μg/ml,平均値±標準偏差)。一方正常成人5名及び小児でなお神経線維腫を認めない2名では何れも増殖因子を認めなかった。 <2、神経線維腫由来増殖因子の分離。>___ー 上述の患者血清よりの増殖因子の分離に引き続き、腫瘍組織より増殖因子の分離を行なった。その理由として、1、での成績、文献的にも腫瘍増殖因子が腫瘍組織により産生されているという報告が多いこと及び患者血清よりの分離では、多量の血液を必要とするため、以後の精製、化学構造の同定が困難になることの計3つの理由による。58才、男性レックリングハウゼン患者から、手術時切除したplexiform neurofibromaを材料とした。約15gの材料を蛋白分解酵素阻害剤入り緩衝液でホモジナイズ、超遠心後、上清を凍結乾燥した、同試料を酢酸に溶解し、Pー4カラムでゲル濾過し、2mlずつ分画した。各画分について、2ー5代継代培養の神経線維腫線維芽細胞(1例)を対象とし、FCS無添加の状態で ^3Hーthymidineの取り込みを検討した。その結果、No.27の分画にDNA合成の亢進を認めた。これは繰り返し行なった実験で再現性を確認した。他方、腫瘍切除患者の正常部皮膚より採取、培養した線維芽細胞に対してはDNAの合成亢進は認められなかった。現在同画分の蛋白分解酵素による不活性化の検討及び、精製について検索を続行中である。
|