研究概要 |
同調機能に異常のあるヒト概日リズム障害に有効とされるビタミンB_<12>の奏効機序解明の目的で,ラット行動概日リズムの内因性周期τと同調因子である光に対する感受性を,高B_<12>状態と低B_<12>状態で比較した。B_<12>にはmecobalamimを用い,これを1mg/kg含む過剰食と全く含まぬ欠乏食を与え,血清総B_<12>濃度を測定した。 1.τに及ぼす効果。B_<12>欠乏食の長期投与による低B_<12>状態で,B_<12>を浸逓圧ミニポンプで及下注入し血清B_<12>濃度を急に数十倍に高めると,自発運動・飲水行動のτが僅かに短縮したが,加齢によるτ短縮の影響を除外できなかった。恒常薄明条件下でB_<12>過剰食と欠乏食を9ケ月と1年与える2種の実験では,一部に高B_<12>状態ではτ短縮,低B_<12>状態ではτ延長を示したが,全体としてはτに有意差はなかった。以上からB_<12>にはτ短縮作用があるとは結論できない。 2.光感受性に及ぼす効果。12:12時の明暗サイクルの明期照度を5luxから0.02luxまで段階的に低下させたが,正常・松果体摘除ラットのいずれも高B_<12>・低B_<12>状態ともに行動リズムは同調し,差異が認められなかった。恒常条件下で700lux・30分の光パルスを加え位相反応曲線を作製したところ,位相後退部分の前退部分に対する比率は,低B_<12>状態の0.73に較べ高B_<12>状態では30.52で前進部分がより大きかった。12:12時の明暗サイクル(明期Ilux)の位相を急に6時間前進させた時の,行動概日リズムの平均再同調日数は,高B_<12>状態では14.5日で,低B_<12>状態の19.9日に較べ有意に短かった。明暗比1:1の明暗サイクルの同期を,23時20分から26時まで段階的に延長して行動概日リズムの同調可能範囲を検討中である。これらの結果は概日系の光感受性は高B_<12>状態のほうが,低B_<12>状態よりも高いことを示唆する。
|