肺移植や心肺移植後の急性拒絶反応と肺感染の鑑別方法を確立する目的で、ラットの肺移植モデルと、マイコプラズマ・プルモニス感染モデルを用いて、肺組織と気管支肺胞洗浄(BAL)液の単核細胞亜集団を、免疫組織化学的に分析した。【結果】1.異系移植(BN/LEW)群は、全例とも急性拒絶反応を発症し、2日目の軽度拒絶反応から6日目の高度拒絶反応へ進行した。2.組織所見では、拒絶反応で血管や気管支周囲に浸潤する単核細胞は、移植後2-4日目は活性型および非活性型マクロファージ(Mφ)が大部分で、T・Bリンパ球も4、6日目に増加した。6日目の高度拒絶反応では、肺胞間質にも、これらの細胞が浸潤した。3.Tリンパ球サブセットのうち、ヘルパーT細胞は、2-4日目に血管や気管支周囲に浸潤し、サプレッサーT細胞は、4-6日目とやや遅れて浸潤してきた。両者の組織内分布には、とくに相違はみられなかった。4.マイコプラズマ感染モデルは、全例肺炎を発病した。血管や気管支周囲には、活性型・非活性型MφやヘルパーT細胞の中等度〜高度の浸潤を中心に、サプレッサーT細胞、B細胞も軽度〜中等度に増加した。5.肺感染の組織像では、同一標本内でも、部位により細胞浸潤の程度に差が著しいのに対して、拒絶反応では、全肺で同時に進行する、血管や気管支周囲の同心円状の細胞浸潤が特徴的であった。6.BAL液の総細胞数は拒絶反応の進行とともに有意に増加し、ことにMφが6日目に著明に増加し、T細胞、好中球も増加した。7.マイコプラズマ肺炎でも、BAL液中の総細胞数は、Mφ、好中球、T細胞、B細胞の順に増加し、拒絶反応と比べて差はなかった。【結語】ラットの移植肺急性拒絶反応とマイコプラズマ肺炎では、肺組織やBAL液中に浸潤してくる単核細胞亜集団の組成はほぼ同様であったが、肺組織内の単核細胞亜集団の分布に差異がみられた。
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